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 天意を動かす魔法とその応用、心得について 

  主に天候を動かす術のことである。
  分かりやすいところで言うと、雨を降らせるといったものか。
  しかし術というと、磨き上げた技というほかには錯覚やら幻惑やらといった意味合いが強く、
  それこそ誤解を生みやすいため、ここでは魔法という言葉を使う。
  使用できる者は滅多にいないため超常のものと思われがちであるが、
  創世期以前より存在していたものであるといわれている。

  用途は主に農作物を育てるためであったといわれており、
  雷が稲を実らせるといわれるようになり、稲妻と呼ばれるようになったのだという。

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  雨を降らせるには、その仕組みと同じく、水に熱を注ぐイメージを描けばよい。
  この場合の熱は、使用者の精神によるもの、つまり情熱といったものである。
  簡単にいうと、その者の意思の力であるため、そう特別なことではない。

  地上に点在する水場を思い浮かべ、そこに祈りを捧げるふうにするのだ。
  水場の正確な情景や場所は知らなくとも問題はないが、
  知っていた方が接続しやすく、ゆかりのある地だとなおさらよい。
  要領としては、火や光の属性の魔術を行使する感じか。
  ただ実際のところ、規模を考えれば、極魔法よりは負担は大きい。

  精神力を分け与える術も存在するのだが、こちらも熱を注ぐに等しい。
  天意を動かす者であれば扱うことはたやすいといえる。
  また、これを扱うことができる者であれば天意を動かす素質は多少あるということだ。

  ついでにいうと、降らせることのできる水の量、範囲、時間、速度などは術者による。
  例を挙げると、降水の範囲は狭くとも速度や量はある、ただし長くは持たない場合。
  そして、範囲は広く、長く持たせられても、速度もや量はそこそこといった場合などがある。
  慣れればある程度は調節できるが、基本は使用者の器量によるものなのだ。

  しかしながら、降らせるというよりは循環させるつもりですることがいちばんの極意である。
  だから、便宜上は使用者と呼んでいても、適切な呼び方ではない。
  簡単にいえば、水と心を通わせること、つまりコミュニケーションの一環なのだ。
  婚約を意味するエンゲージとはその辺りから来ており、円だったり縁だったりもするのだ。

  天意を動かす術者の中に、海に深く潜り、
  更に適応することができる者がいるとはそういうことなのだ。

  足場を作ってほしい場合などには、河川や湖の水の流れを止めてもらうことも可能。
  そのさまは、まるでガラス張りの鏡のように澄んでいることから、
  まさに明鏡止水であるとまで言わしめる。
  風の動きで水の流れを導くこともでき、逆流させることもできるが、
  ほとんどにおいて意味がないため、実行しようとするものはいないといってもいい。

  そもそも、自然の流れに干渉する技は長くは持たない。
  使用者の精神の消耗のみならず、自然全体に影響を及ぼす元であり、
  両者においてもデメリットでしかないからだ。

  余談として、海や川の幸を採ってもらうこともできるが、
  生命であるゆえ、むやみに施行するものではない。

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  注意点として、自然界における水とは、人体でいえば血液に当たる部分であるということ。
  無茶苦茶な行い方をすれば、使用者の血液の循環にも影響がでるということだ。
  そうなれば心臓にまで悪影響が出てきかねない。
  宿して循環させる器量の足りない者が無理に行おうとしてそうなった例もあるのだ。
  寒冷な地では特に注意が必要であり、施行はほぼ不可能といってもいい。

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  大方の水場は応えてくれるのだが、近年では、場所によっては実施しにくい場合がある。
  そうはいっても、邪な心がなければ心配することはない。呼びかけることについては。

  実をいうと、自然界にとっても、エネルギーに余裕がないのだ。
  自然界側が使用者に力を分け与えて循環させてもらう、その意味では使用者も受け身である。
  しかも、それは自然界のもののみならず、空の向こうの力も媒介にしているといわれている。
  もとより雨とは、陽の光が要である現象なのだから、
  そこに帰結するのは必然であるというべきか。
  星も雨のように降らせることができるという発想の所以もそこにあるのだろう。

  しかし、創世期以前の大昔ならともかく、
  現代では、その天からのエネルギーがやって来づらい状況である。
  こうして、あらゆる術の祖とまでいわれた、天意を動かす魔法は徐々に姿を消していった。
  長時間に亘って大雨を降らせることができる者など、もはや希少である。

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  風を吹かせる能力と併用すれば嵐を呼ぶことも可能であるが、
  こちらもほとんどにおいて意味がなく、消耗も激しいため、
  大昔であっても実行しようとするものはほとんどいなかったといっていい。

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  ちなみに雪を降らせるにも、風を動かすところから始める。
  この場合の降らせるとは、舞わせるといったものであり、
  手を取り合って音楽に合わせてダンスをするといった要領である。
  風とは空気の振動であり、音楽である。
  しかしながら、アルテュルナは温暖な気候が広がっているため、機会はそれほどない。

  風を奏でてできることは、雪を舞わせる応用として、鳥を呼ぶというところにもある。
  空を飛ぶために必要な風と、それが紡ぐ音を捧げることによって来てもらうのだ。
  特定の鳥を思い描いているのでなければ、集団でやって来る場合が多い。
  しかし、応じてくれるか否かは鳥次第でもあり、現地付近の鳥との相性も大きく係わる。

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  ところで、これらは燃料を注ぐ現象でもあり、戦車を動かすこととて可能ではあるのだが、
  ……そんな時がやって来ないことを祈るばかりだ。

  そもそも、この天意を動かす魔法をはじめとした、あらゆる術を行使することは、
  下手をすれば暴力になりかねないのだ。愛なき者が使ってはならない。
  何事にも言えるが、ほどほどにしておくことが大切である。

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  詳 細 リ ン ク
   自 己 錬 成 型 と エ ン ゲ ー ジ 型 の 魔 術 に つ い て 
   天 意 を 動 か す 魔 法 と そ の 応 用 、 心 得 に つ い て 
   反 魂 を は じ め と し た 禁 術 に つ い て 
   空 間 転 移 と 時 間 転 移 に つ い て 

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