記 憶 の 夢 1
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 その日の夜は夢を見た。

 わたしは、またあの森の中にいた。今度は木のそばに座っている。隣にいる彼と一緒に。
そして――……。

 彼は泣いていた。縋るようにして、わたしの袖を強く握ったまま。
 出会ったときに抱いた、沈着そうな印象とは裏腹に激しく。

 確かに、中性的な雰囲気であり、やや細身であるため、屈強だとは言いがたいと思う。
 しかし、弱々しいかと言えばまったく違うだろうと思った。むしろ意志はかなり強いほ
うだとすら思えるほどで。

 余程つらい目に遭ったのだろう、かわいそうに……。
 たまらず彼を抱き寄せて髪をなで、あやすように背を叩きながら言う。

「大丈夫……。わたしはここにいるから」
 この言葉が適切であったかどうかは分からない。
 今のわたしはこれ以上の言葉など持ち合わせていなかったし、何よりこう言ってあげた
かった気がしたのだ。
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