このふざけたタイトルはなにかって?
だって、単に始末書とだけ書いたって味気がないだろう。僕、こう見えても、料理には
拘るタイプなんだよ。
ファイルに写真を添付しない限り、顔は見えないから知らないって?
これぞ、神隠しの本領発揮ってね。
ああ、はいはい。始末書ね。
例の襲撃の件なら僕たちの勝利で幕を下ろしたのに、なぜ始末書なのかといえば……、
そこは大人の事情ということで。
そもそもこれ、どこかに提出するわけでもない、ただの書き置きなんだ。
大っぴらにはしておかないけれど、見つけられてしまったのならそれはそれでおもしろ
いかもねって。この場合は紙隠しだね。
あの後、僕は気を失って、シェリファがなんとかしてくれるらしいことは言っていたけ
れど、実際に介抱していたのはゼイオスとアゼイルだったそうだ。
アゼイルが力任せに僕を引きずっていこうとしたところ、ゼイオスのほうは適当に僕の
両足を持って運んだとのことだ。そのかたわらで、ファクトがほどほどにちょっかいを出
していて、エレンがあわれみの目を向けていたという。
うんうん、僕はいい部下に恵まれた。
それで、ゼイオスは、あの戦いで損傷を受けた艦の修理費を僕に工面してほしいのだそ
うだ。まあ、それはそうだよね。
シェリファも、そのときに刀が使い物にならなくなったらしく、買い替えるための費用
を出してほしいのだと。うう、仕方ないな。
それから、エレンとともに行った隣町の酒場で騒ぎを起こして目立ちすぎたから、なん
とか隠蔽してほしいのだという。……え!?
しかも、暴れて壊した分の修繕費は、店側の人は気にしていなかったけれど、さすがに
申し訳ないので出してあげておいてくれと、しれっと言ってきた。
アゼイルとファクトに至っては、喫茶店で飲み食いした分の請求を僕に付けていた。い
やいや、さすがにそれは横暴だろう。
使い走りのようなことをさせているのだから、そのくらいの保証や保障はしてもらわな
いと割に合わないということなのだろう。
彼ら五人で百人以上の働きをさせているようなものでもあり、ひとりにつき二十人以上
であるという計算だ。
その点でいえば、僕に拒否する権利はないに等しい。むしろ断ろうものなら、供給をと
められる可能性が高い。
彼らは非常に有能な分、それ相応の還元を要求するのだ。
心強くあると同時に危険でもある、それも一筋縄ではいかない、まさに綱渡りのような
間柄なのだ。
『神隠し』Master.A
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