+. Page 104 | 雨降る夜の亡霊 .+
とある指揮者の語り 05

 話を戻しますと、夜空に浮かぶ星のきらめきというものは、幾多の悲鳴からなりたっ
ているということです。姫という呼称もヒメイという音から成立したのでしょう。
 星の歴史はその繰り返しで紡がれてきました。ヒストリーはヒステリーです。
 処女信仰とやらの背景には、混じりけのない光であればあるほどよいといった意味が
あり、それを持ってくると勲章や褒美などももらえるのでしょう。
 ただし、それだけの仕組みにはとどまりません。
 力を奪いすぎると、雌とて当然のなりゆきで枯渇します。俗にいうメンヘラといった
状態です。
 すると当然、補充しようとする働きかけが起こり、結果としてどこからか奪うことと
なります。
 吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるといった伝承は、そこからのいわれなのでしょ
う。

 恩を仇で返すという言葉に焦点を当ててみましょう。
 その、温情をかける行為には光があるということであり、霊力があるということでも
あります。そして仇で返すという行為が、その霊力を奪い取るということなのです。
 もっといえば、感謝の思いで光が返っていかないようにするために、仇で代用したと
いうことです。
 それと、ばかな子ほどかわいいという真意には、なにも疑問に思わずに取ってきてく
れる、もしくは差し出してくれるほうが都合がいいといったものが隠されているのです。

 目に見えるかたちのことでいうならば、やせることを執拗に迫るなどをするところに
ありますね。特に女性に対しては顕著でしょう。逆に重用していた時代もありましたが。
地域によっては現在もでしょうか。
 血のほかには脂質も霊気からなっていると見なし、それを出させようとしており、巨
乳というものが賞賛される理由もそこに通じているのでしょう。
 ただ、霊気といいましても、清廉なだけではなく、瘴気といったたぐいのものもござ
います。
 生きていくうえでは悪意がわき起こることや吹きかけられることもあります。
 中年太りなどというものの大半の原因であり、星にとっては必要のない気だからとい
うことで回収されずにいるのです。
 いけにえには女性、特に子どもを差し出す所以であります。イケ花というものの由来
でもあるのでしょう。
 池は水辺であり、こちらも世の境目を象徴しており、行けという音を発しています。
 美男であることをイケメンというのは、イケニエという音から定着したのでしょう。
そのほとんどは女性の霊気をまとっているがためであり、番う男性の寿命が延びるのと
裏腹に女性の寿命が縮むというわけでもあります。
 気というものは、移り気というだけありまして、なにもしていなくとも移ろっていき
ます。風邪という現象が分かりやすいでしょうか。
 すでに番っている男性にひきつけられる女性が多いのも、その番っている女性の霊気
と混ざっているさまに魅力を感じているからなのでしょう。
 ちなみに、男性が数多の女性にひきつけられる理由は、できるだけ多くの子を成させ
ようとするためです。
 男性の恋愛が、名前を付けて保存というふうにいわれているわけ。それはその数が、
星ひいては宇宙からの勲章となり、名誉なことであるという刷りこみを意識の奥にされ
ているからです。
 女性の恋愛が、上書き保存であるといういわれ。こちらは失恋をしたときの衝撃や喪
失感が尋常ではないため、早く忘れようとする防衛反応であるそうです。霊気を持って
いかれた状態であるのですから、それも当然といえるでしょう。
 なかったことにさせることによって、男にうらみを向けさせることをさけて、奪わせ
た霊気に毒気が混ざらないようにしようとする宇宙の魂胆が見え隠れしていますね。

 それでは、女性は女性に恋するものなのかといいますと、それはあまり当てはまりま
せん。それを恋であると定義、または思いこんでいる場合は別としまして。
 もちろん、憧憬のような感情をいだくことはありましょう。
 しかし、もし本当に恋をしているというならば、霊気を奪われすぎていることが原因
と見えます。霊気がこちらにも来いという思いですね。
 女性の霊気をたとえるならば、もともと完成された絵のようなものであり、森羅万象
が記されているといっても過言ではありません。
 ですから、だれかと交流するにしても、比較的に少人数で済むものなのです。
 情報の共有化も即時にされやすいですから。
 その意味では、星や宇宙にとっては脅威でしょう。
 女性同士であると、互いに霊気を放出する性質であるからして一騎当千の現象を生み
出す場合もありますが、諸刃であることには違いないといったところでしょうか。

 女性の場合、そのような素質を差し引いたとしても、子宮という穴、言い換えると傷
があるため、それを癒そうとする働きかけが起こり、結果として霊気を宿しやすくなり
ます。
 特に、月経というものが来ているときには、もとからの傷口に、さらに傷を重ねてい
る状態であるため、おこっているというわけでもあり、覚醒のもととなりやすいのです。
 この状態を重いと表現しますが、実際にそこに重力というものが働いているというこ
ととなります。
 星のほうからしてみれば、忍耐を付けさせようとしているといえば聞こえはいいです
が、真意としては、出血というかたちで霊気をたぐり寄せていることに気が付かれたく
ないということです。
 出血大サービスという言葉の由来も、そこにあるというわけですか。
 月を経るとはよく言ったもので、月は星にとっての回線なのです。
 血波に……ではなく、ちなみに。女性に貧血や冷え性などといった症状が出やすい理
由でもあります。
 なにもしていなくても、なにも食べなければ体重が減るという現象、女性には特に際
立っていますね。

 一方で男性は、ひとりひとりが、そのような絵の、パズルのピースでございます。
 比較的に大勢と仲良くなることができる理由でもあります。
 そうした意味では、男性同士の恋愛のほうが成立する可能性が高いでしょう。
 そうなると、男性が霊気を吸引する性質であるからして、互いに強力にひかれあうこ
とでしょう。
 しかも、相乗効果として、さまざまな情報も入って来やすいということでもあります。
 互いが互いに夢中になること必至で、結果として子種をまき散らすことをしなくなり
ます。
 星や宇宙にとっては脅威以外のなにものでもありません。

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